この記事で整理すること
- 自社製品の品目コードと対象可否
- 英国側の輸入者と契約条件
- 年間・直近30日間の輸入見込み額
- 製造拠点と製造工程の整理
- 実排出量データと検証の可否
- 見積書・契約書での役割分担
- 英国バイヤーへの説明資料
01
英国CBAMの基本を確認する
英国CBAMは、炭素集約度の高い特定の輸入品に、英国国内の生産者が負担する炭素価格と対応する負担を求める制度です。HMRCの2026年7月16日時点の案内では、2027年1月1日から、アルミニウム、セメント、肥料、水素、鉄鋼の5分野に属する指定品目が対象になります。
登録基準は、対象品の輸入額が直近12か月で5万ポンド以上となった場合、または今後30日以内に5万ポンド以上の輸入を見込む場合です。制度の詳細には今後公表・確定される項目もあるため、英国政府の最新情報を継続して確認する必要があります。
日本企業にとっての重要点
英国CBAMは環境部門だけの課題ではありません。価格、見積条件、納期、輸入者の役割、取引継続の判断に関わるため、海外営業・貿易・製造部門が共同で整理するテーマです。
02
対象品目は商品名ではなく品目コードで確認する
「鉄を使った製品だからすべて対象」「完成品だから対象外」といった判断はできません。HMRCは対象品を品目コード別に公開しています。まず英国輸入時に使うcommodity codeを確認し、対象一覧と照合する必要があります。
複数の材料からなる製品、部品と完成品、加工度の異なる商品ではコードが変わることがあります。営業資料の一般名称だけでなく、英国側の輸入申告で実際に使用するコードを、バイヤー、通関業者、必要に応じて専門家と確認します。
03
誰が輸入者になるかで責任が変わる
HMRCの案内では、関税が発生する場合、原則として輸入申告に記載された個人・組織が輸入者と扱われます。通関業者やフォワーダーが手続きを代行しても、輸入者としての責任が自動的に移るわけではありません。
日本メーカーが英国バイヤーへ通常の輸出を行い、英国企業が輸入者となる場合は、英国企業が登録・申告の中心になります。一方、DDP条件や現地在庫販売など、日本企業側が輸入者となる設計では、英国外の企業でも対象となり得ます。
したがって、見積時にIncotermsだけを記載して終わらせず、輸入申告上の輸入者、CBAM登録・申告・納税、必要資料の取得を誰が担うかを明文化することが重要です。
商談で確認する質問
「Who will be the importer of record for the UK shipment?」「What emissions and verification data will you require from us?」の2点は、価格提示前に確認する価値があります。
04
日本メーカーにも排出量データの準備が求められる
英国の輸入者が実排出量を使って申告する場合、供給者から検証報告書または検証サマリーを取得し、関連資料を6年間保管する必要があります。実排出量データがない、または検証済みであることを示せない場合、英国政府が設定するデフォルト値を使用します。
つまり、日本メーカーが直接の納税義務者でなくても、英国顧客から製造拠点、対象工程、製品重量、排出原単位、検証状況などの照会を受ける可能性があります。回答できないことが直ちに輸出禁止を意味するわけではありませんが、デフォルト値による負担が価格競争力に影響する可能性があります。
製造工程が複数工場にまたがる場合や、材料を外部調達している場合は、どこまでのデータを自社で持ち、どこから仕入先へ確認するかを早めに整理します。
05
CBAMを営業条件として早めに整理する
CBAM対応を「受注後に通関担当へ確認する事項」にすると、見積のやり直し、責任分担の対立、出荷延期につながります。英国向け営業の初期段階で、対象可否と輸入者の役割を確認し、必要データの準備状況を伝える方が安全です。
営業資料には、対象製品の品目コード候補、製造国・製造拠点、正味重量、排出量データの有無、第三者検証の有無、追加情報を提供できる窓口を整理します。すべての数値が確定していなくても、「何が確認済みで、何が未確認か」を分けて伝えることで、英国バイヤーとの協議が進みやすくなります。
既存顧客には、2027年の導入前にCBAM対応方針を確認する打ち合わせを設け、新規顧客には見積依頼時の確認項目へ組み込みます。
06
参入障壁と商機を分けて考える
参入障壁は、排出量の測定・検証コスト、サプライヤーからのデータ取得、契約変更、価格への転嫁、英国側の事務負担です。特に少量多品種や複数工場で生産する企業は、製品単位の整理に時間がかかります。
一方で、品目コード、製造工程、排出量、検証方針を早く説明できるメーカーは、英国バイヤーの調達負担を下げられます。CBAM対応そのものを売り文句にするのではなく、「必要情報を期限内に出せる供給者」であることが、既存取引の維持や競合からの切替提案につながる可能性があります。
価格だけで勝負するのではなく、規制対応力、資料提出の速さ、英語での説明、契約条件の明確さを含めた総合的な供給能力として示すことが重要です。
07
2026年中に進めたい7つの行動
- 1. 対象品を洗い出す:英国向け製品の品目コード候補と対象可否を確認する。
- 2. 取引条件を確認する:既存契約のIncotermsと輸入者を整理する。
- 3. 輸入規模を把握する:英国顧客ごとの対象品輸入額と2027年の見込みを確認する。
- 4. データ責任者を決める:営業、製造、環境、貿易の担当範囲を決める。
- 5. 製造データを整理する:工場、工程、材料、正味重量、排出量データの有無を一覧化する。
- 6. 英国顧客へ確認する:必要なデータ形式、検証、提出期限、費用負担を協議する。
- 7. 営業資料へ反映する:確認済み事項と未確定事項を英語で説明できる状態にする。
まず営業側でできること
専門的な排出量算定に入る前に、対象製品、輸入者、年間取引規模、顧客から求められる資料を整理します。必要な対応範囲を明確にしてから、通関・環境・法務の専門家へつなぐ方が効率的です。
関連する実務ガイド
参考情報
制度の細部は更新される可能性があります。実際の申告、税務、排出量検証、品目分類については、英国政府の最新情報と専門家の確認が必要です。
- HMRC「Prepare for the Carbon Border Adjustment Mechanism」更新:2026年7月16日
- HMRC「Check which goods are in scope of CBAM」公開:2026年7月16日
- HMRC「Check if you’re classed as the importer for CBAM」公開:2026年7月16日
- HMRC「Work out the date you’ll need to register for CBAM」公開:2026年7月16日
- HMRC「Keeping records for CBAM」公開:2026年7月16日
- HMRC「CBAM Policy Summary」更新:2026年7月16日
NEXT STEP
英国向け営業とCBAMの確認事項を整理したい方へ
対象製品、英国側の販売先、輸入者、必要資料を整理し、実際の見積・商談で確認する項目へ落とし込みます。
排出量算定や法的判断を代行するサービスではありません。まず営業・取引条件を整理し、必要に応じて通関、環境、法務の専門家につなぐ前提で支援します。
代表者本人が内容を確認し、実務を前提にお話しします。